工学

通信工学


変調

  • 音声信号やデジタル信号等をなんらかの方法で伝送する際に、そのままの入力信号の形では不都合な点が多い。
  • 例えば音声信号を電波で送信する際には、入力信号の波長に応じた長さのアンテナが必要となるので、非現実的である。また有線通信であった場合にも、単一の入力信号が伝送路を占有する形となるので、帯域の利用効率の点からして効率的であるとはいえない。
  • そこで入力信号を搬送波と呼ばれる扱いやすい信号に乗せる操作を行うことにより、上記の問題点を解消することが可能である。この操作を変調を呼ぶ。
  • 一般的に搬送波に音声信号等の連続な変化を与えることをアナログ変調と呼び、デジタル信号等の不連続な変化を与えることをデジタル変調と呼ぶ。

搬送波

  • 振幅A、角周波数\omega{}(=2\pi{}f)、周波数f、位相\phiとすると、搬送波v_{c}(t)は以下のように表現される。
    • v_{c}(t) = A\cos{(\omega{}t+\phi)}
    • = A\cos{(2\pi{}ft+\phi)}

アナログ変調方式

  • アナログ変調の方式は、主に搬送波に対して行う操作によって分類される。
    • 振幅変調 (AM, Amplitude Modulation)
      • 搬送波の振幅に対して、入力信号に比例した変化を与える。
    • 周波数変調 (FM, Frequency Modulation)
      • 搬送波の瞬時角周波数に対して、入力信号に比例した変化を与える。
    • 位相変調 (PM, Phase Modulation)
      • 搬送波の位相に対して、入力信号に比例した変化を与える。

振幅変調

  • 入力信号の振幅をA_{s}、周波数をf_{s}、搬送波の振幅をA_{c}、周波数をf_{c}とすると、振幅変調波v_{am}(t)は以下のように表現される。
    • v_{am}(t) = A(t)\cos{2\pi{}f_{c}t}
    • v_{am}(t) = A_{c}(1+m_{am}\cos{2\pi{}f_{s}t})\cos{2\pi{}f_{c}t}
      • ただしm_{am} = \frac{A_{s}}{A_{c}} ( 0 \leq m_{am} \leq 1)で、変調指数と呼ぶ。
  • 幾何学的な意味としては、\pm{}A_{c}を中心にA_{s}\cos{2\pi{}f_{s}t}の波形が包絡線として現われる。また、変調指数は振幅変調波に対する入力信号の割合を表す。1に近いほど効率の良い伝送となるがノイズには弱くなる。1を超える場合は信号が歪み過変調となり、入力信号が正しく搬送波に乗せることが出来ない。

周波数成分

  • 振幅変調波の式を展開して、どのような周波数成分が含まれているのかを調べてみる。
    • v_{am} = A_{c}\cos{2\pi{}f_{c}t+A_{s}\cos{2\pi{}f_{c}t}\cos{2\pi{}f_{s}t}
    • = A_{c}\cos{2\pi{}f_{c}t+\frac{A_{s}}{2}\cos{2\pi{}(f_{c}+f_{s})t}}+\frac{A_{s}}{2}\cos{2\pi{}(f_{c}-f_{s})t}
  • ここで第一項をキャリア成分、第二項を上側波帯(USB, Upper Sideband)、第三項を下側波帯(LSB, Lower Sideband)と呼ぶ。

DSB変調

  • 振幅変調波の周波数成分には入力信号の伝送に直接関係のないキャリア成分が含まれている。キャリア成分を抑圧することにより無駄な電力消費を抑え、振幅変調に比べ伝送効率が高くなる。
  • DSB変調波をv_{dsb}(t)は以下のように表現される。
    • v_{dsb}(t) = A_{c}m_{am}\cos{2\pi{}f_{s}t}\cos{2\pi{}f_{c}t}
    • = \frac{A_{s}}{2}\cos{2\pi{}(f_{c}+f_{s})t}+\frac{A_{s}}{2}\cos{2\pi{}(f_{c}-f_{s})t}
  • このようにDSB変調では、上側波帯と下側波帯の二つの周波数成分が含まれている。

SSB変調

  • DSB変調の上側波帯と下側波帯は同じ情報を持っている。フィルターを通すことによりDSB変調波に対して、さらに片方の信号を取り出す変調をSSB変調と呼ぶ。
  • DSB変調では振幅変調と同じ帯域を占有するが、SSB変調ではその半分しか占有しない。
  • 周波数多重化により、複数の信号を1本のケーブルで効率的に伝送することが可能である。

周波数変調

  • 入力信号をs(t)、入力信号の周波数をf_{m}、搬送波の振幅をA_{c}、周波数をf_{c}、最大周波数偏移を\Delta{}f、瞬時角周波数を\omega_{m}とする。
  • |s(t)| \leq 1として、\omega_{m} = \frac{d}{dt}\phi{(t)} = 2\pi{}\Delta{}fs(t)の関係より、\phi{(t)}は以下のように表現される。
    • \phi{(t)} = \int\nolimits_{-\infty}^{t}\omega_{m}dt = 2\pi{}\Delta{}f\int\nolimits_{-\infty}^{t}s(t)dt
  • ここでs(t) = \cos{2\pi{}f_{m}t}の時、周波数変調波v_{fm}(t)は以下のように表現される。
    • v_{fm}(t) = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+\phi{(t)})}
    • = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+2\pi{}\Delta{}f\int\nolimits_{-\infty}^{t}s(t)dt)}
    • = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+\frac{\Delta{}f}{f_{m}}\sin{(2\pi{}f_{m}t)})}
    • = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+m_{fm}\sin(2\pi{}f_{m}t))}
      • ただしm_{fm} = \frac{\Delta{}f}{f_{m}}で変調指数と呼ぶ。

周波数成分

  • 周波数変調波v_{fm}(t)をフーリエ級数展開することにより、ベッセル関数で表せることがわかる。これにより周波数変調波の周波数成分を求めることが可能である。
    • v_{fm}(t) = A_{c}\sum_{n=-\infty}^{\infty}J_{n}(m_{fm})\cos{\{2\pi{}(f_{c}+nf_{m})t\}}
      • ただしJ_{n}(x)はn次の第一種ベッセル関数で、J_{n}(x) = (\frac{x}{2})^{n}\sum_{m=0}^{\infty}\frac{(-1)^{m}}{m!(m+n)!}(\frac{x}{2})^{2m}である。

占有帯域幅

  • 周波数変調波において、90%の電力が含まれる帯域幅BWはカーソン則により、以下のように近似される。
    • BW = 2(\Delta{f}+f_{m})

位相変調

  • 入力信号をs(t) = \sin{2\pi{}f_{m}t}、入力信号の周波数をf_{m}、搬送波の振幅をA_{c}、周波数をf_{c}、最大位相偏移を\Delta{\theta}とすると、位相変調波v_{pm}(t)は以下のように表現される。
    • v_{pm}(t) = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+\phi{(t)})}
    • = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+\Delta{\theta}s(t))}
    • = A_{c}\cos{(2\pi{}f_{c}t+\Delta{\theta}\sin{2\pi{}f_{m}t})}
  • 位相変調は、時間微分した入力信号を周波数変調したものと等価である。

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Last-modified: 2010-02-18 (木) 04:15:20 (5173d)